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育成就労制度とは? 外国人を受け入れる農家さんが2027年までに知っておきたいこと

公開日:2026年10月21日・畑のマニュアル工房

2027年4月から、技能実習制度に代わって「育成就労制度」が始まります。

これからは「3年間で一人前に育てて、その後も長く働いてもらう」ための制度になります。受け入れる農家さんには、これまで以上に「育てる計画」と「教える仕組み」が求められます。

この記事のポイント

  • 始まるのは2027年4月1日。期間は原則3年
  • 最初に3年分の育成計画を作り、国の機関の認定を受ける
  • 日本語と技能の試験に向けて、学ぶ機会をつくる
  • 1年たつと、本人の希望で別の農園へ移れる(転籍)
  • 農業では、来日後に農作業安全の講習を受けさせることが条件

目次

  1. そもそも育成就労制度とは
  2. 登場する機関と役割
  3. 農業分野のルール
  4. 受け入れる農家さんがやること5つ
  5. 農家さんにとってのメリットと注意点
  6. 2027年4月までにやっておきたいこと
  7. 教え方を「人」から「仕組み」へ
  8. まとめ
  9. よくある質問

そもそも育成就労制度とは

ひとことで言うと、「人手不足の分野で、外国人を3年かけて育て、そのまま働き続けてもらう」ための制度です。

  • 始まる日:2027年(令和9年)4月1日(2024年6月21日公布の改正法による)
  • 期間:原則3年
  • ゴール:特定技能1号(より長く働ける在留資格)の水準まで育てる

技能実習と何が変わる?

項目 これまで(技能実習) これから(育成就労)
目的 国際貢献(技術を母国へ持ち帰ってもらう) 人材を育て、確保する
期間 1号(1年)・2号(2年)・3号(2年) 原則3年
本人の希望で職場を変える 原則できない 条件を満たせばできる(農業は1年後から)
日本語 介護以外は条件なし 働く前にA1相当(N5程度)、特定技能へ移るときにA2相当(N4程度)
特定技能1号への移行 関連する職種なら試験免除 技能と日本語の試験に合格が必要
サポートする団体 監理団体 監理支援機関(改めて国の許可が必要)

出典:厚生労働省「育成就労制度の概要」、JITCO「育成就労制度」

今いる技能実習生は、すぐに切り替わるわけではありません。2027年4月の時点で来日していれば、認定された計画のとおり技能実習を続けられます(出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」)。

登場する機関と役割

育成就労では、農家さんのほかにいくつかの機関が関わります。名前が似ているので、先に整理しておきます。

機関 役割
農家さん(育成就労実施者) 雇用し、育成計画にそって育てる
監理支援機関 受け入れを支え、農家さんを監理する。今の監理団体も、改めて許可が必要
送出機関 母国で人材を募集・紹介する。本人から取れる費用は月給2か月分まで
外国人育成就労機構 育成計画を認定し、制度の運用を監督する国の機関(外国人技能実習機構から移行)
農業育成就労協議会 農林水産省が設けた農業分野の協議会。受け入れる農家さんは協力が必要

出典:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」、厚生労働省「育成就労制度の概要」、農林水産省

農業分野のルール

農業の細かいルールは、2026年1月23日に国が決めた「分野別運用方針」に書かれています。農家さんに関係するところだけ抜き出しました。

項目 農業分野の内容
対象の作業 耕種農業(施設園芸、稲作・畑作、果樹)、畜産農業(養豚、家きん、養牛)
受け入れの上限 全国で2万6,300人(2027年度から2年間)
雇い方 直接雇用のほか、派遣でも受け入れられる
日本語の目安 働き始めるまでにA1相当、転籍するときにA2.1相当、3年目の終わりまでにA2.2相当
技能試験 1年目に「初級」、3年目までに「専門級」(作業の種類ごと)
転籍できる時期 同じ農園で1年働いた後

出典:出入国在留管理庁「農業分野の分野別運用方針」

農家さん側の条件

  • 労働時間・休日・休憩・残業代を、労働基準法どおりにする。農業はもともと労働時間などの規定の対象外ですが、育成就労では他の産業と同じ扱いが求められます
  • 直接雇う場合、人を6か月以上雇った経験があること(またはそれに準じる経験)
  • 来日後の講習で、農作業安全の講習を受けさせること
  • 農林水産省が2026年6月に設けた「農業育成就労協議会」に協力すること。在留の申請では、協議会の構成員であることを示す書類が必要です(農林水産省)

受け入れる農家さんがやること5つ

制度の上では、受け入れる農家さんを「育成就労実施者」と呼びます。やることは大きく5つです。

① 3年分の育成計画を作る

最初に、3年間で何をどう教えるかを「育成就労計画」にまとめ、国の「外国人育成就労機構」の認定を受けます。技能実習のように段階ごとに作るのではなく、最初に3年分を作ります。

  • 決められた中心の作業(主たる技能)に、働く時間の3分の1以上を当てる
  • 2027年4月より前の申請は、2026年9月1日から受け付けが始まっている

② 日本語と技能の勉強を支える

  • 働き始める前:A1相当の日本語試験に合格するか、A1相当の講習を100時間以上受けている
  • 働いている間:A2相当の日本語講習(100時間以上)を受けられる機会を用意する。費用は農家さんか監理支援機関が持つなどの対応が必要
  • 試験:1年目に日本語(A1相当)と技能(初級)、3年目までに日本語(A2.2相当)と技能(専門級)を目指す

③ 「ここで働き続けたい」と思われる職場にする

農業では、同じ農園で1年働き、日本語(A2.1相当)と技能(初級)の試験に合格すると、本人の希望で同じ種類の作業の別の農園へ移れます(転籍)。

移る先の農園は、元の農園に育成にかかった費用の一部を支払う仕組みです。それでも、育てた人が出ていけば農園には痛手です。教え方、待遇、相談のしやすさが、これまで以上に大切になります。

④ 体制を整え、ルールを守る

  • 「育成就労責任者」「育成就労指導員」「生活相談員」を置く。3人とも、過去3年以内に養成講習を受けている必要がある(当面は技能実習の講習でも可)
  • 労働・社会保険・税の法令を守る。過去1年以内に、自分の責任で行方不明者を出していない
  • 雇用契約のとき、働く条件を本人に直接(またはオンラインで)説明する
  • 受け入れ人数は、常勤の職員数に応じた上限まで(今いる技能実習生も含めて数える)
  • 本人が母国の送出機関に払う費用は、月給2か月分まで。超える分は農家さんか監理支援機関が負担する

⑤ 安全に働けるようにする

農業では、来日後の講習で農作業安全の講習を受けさせることが条件です。

また厚生労働省の指針は、外国人への安全教育を「母国語等を用いる、視聴覚教材を用いる等」、本人が理解できる方法で行うよう求めています(厚生労働省)。農機、農薬、脚立、熱中症など、危ないことほど本人の言葉で伝えることが大切です。

出典:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」、農業分野の分野別運用方針

農家さんにとってのメリットと注意点

内容
メリット 3年で特定技能1号の水準まで育てれば、特定技能へ移って長く働いてもらえる
メリット 働く前から日本語を学んでくるため、現場でのやりとりがしやすくなる
注意点 1年たつと、本人の希望で別の農園へ移ることがある
注意点 日本語講習や、送出機関への費用の上限を超えた分など、農家さん側の費用負担が増えることがある
注意点 責任者・指導員・生活相談員の配置や、労働基準法どおりの労務管理など、整えることが多い

もう一つ大切なのが、在留資格の確認です。働けない外国人を雇うと、雇った側も「不法就労助長罪」で罰せられます。知らなかった場合や、確認を怠った場合も対象になりえます。雇う前に必ず在留カードで、在留資格と期限を確かめてください(長野県警「不法就労防止のために」)。

2027年4月までにやっておきたいこと

  • 今の監理団体が「監理支援機関」の許可を取る予定か聞いておく(そのままでは引き継げません)
  • 受け入れたい作業が、施設園芸・稲作・畑作・果樹などのどれに当たるか確認する
  • 労働時間・休日・残業代の扱いを、労働基準法どおりに見直す
  • 責任者・指導員・生活相談員を誰がやるか決め、養成講習を受けているか確かめる
  • 3年間でどの作業を、どの順番で、誰が教えるか書き出す(育成計画のもとになります)
  • 作業の手順と安全の注意を、本人が読める言葉で渡せるようにする
  • 日本語の講習・試験の受け方と費用を、監理支援機関と相談しておく
  • 農業育成就労協議会への入り方を農林水産省のページで確認する(申請の流れは後日掲載予定)

教え方を「人」から「仕組み」へ

育成就労で大事なのは、3年で試験に合格できるまで育てることと、「ここで働き続けたい」と思ってもらうこと。どちらも、作業を分かりやすく教えられるかどうかにかかっています。

ところが多くの農園では、作業のコツが熟練の方の頭の中にあり、忙しい時期に口で伝えるのが精一杯です。次の3つを用意しておくと、教える人が変わっても同じように伝わります。

  1. 作業ごとの手順書:収穫、選別、農機の扱いなど、よく教える作業から写真つきで書き出す。育成計画や技能試験の対策にも使える
  2. 母国語での安全教育:危ない作業の注意を、本人が読める言葉で前もって伝える
  3. 伝わったかの確認:説明して終わりにせず、簡単なテストや質問で確かめる

「畑のマニュアル工房」は、熟練の方が話すだけでAIが手順の下書きを作り、日本語・英語・ベトナム語・インドネシア語・中国語で読めるマニュアルにできるサービスです。スタッフはQRコードを読むだけで作業前に手順を学び、確認テストで理解を確かめられます。今ならモニター農園(30日間無料)を募集しています(詳しくはこちら)。

まとめ

育成就労制度は、2027年4月1日に始まる「3年で育てて、長く働いてもらう」ための制度です。受け入れる農家さんには、次の3つが求められます。

  • 計画:3年分の育成計画を作り、日本語と技能の試験まで支える
  • 体制:責任者・指導員・生活相談員を置き、労働基準法どおりに働いてもらう
  • 教え方:作業と安全を本人の言葉で伝え、「ここで働き続けたい」と思える職場にする

細かい手続きはこれから示される部分もあります。まずは今の監理団体に今後の予定を聞き、教える作業の整理から始めておくと安心です。

よくある質問

Q. 今いる技能実習生はどうなりますか?

2027年4月の時点で来日していれば、計画どおり技能実習を続けられます。1号から2号への移行もできます。2号から3号へ進むには、2027年4月の時点で2号を1年以上続けている必要があります。

Q. 育てても、すぐ別の農園へ移ってしまいませんか?

農業で本人の希望で移れるのは、同じ農園で1年働き、日本語と技能の試験に合格した後です。移る先の農園は、元の農園に育成費用の一部を支払います。待遇、教え方、相談のしやすさを整えることが、いちばんの対策です。

Q. 派遣で受け入れることはできますか?

農業では派遣での受け入れも認められています。受け入れる農家さんには、6か月以上の雇用経験がある人か、派遣先責任者講習などを受けた人を責任者に置くことが求められます。細かい運用は、派遣会社や監理支援機関に確認してください。

Q. どこに相談すればいいですか?

まずは今の監理団体か、近くの監理支援機関へ。農業分野の制度については、農林水産省 経営局 就農・女性課 外国人グループ(03-6744-2159)が窓口です。

参考資料

この記事は2026年10月18日時点の公開情報をもとにしています。制度の細かな運用は今後変わることがあるため、実際の手続きは監理支援機関や行政機関にご確認ください。