農業でAIはどう使える? 小さな農園でもできる3つの使い方
「農業のAI」と聞くと、ドローンや自動で動くトラクターのような、大きな投資が必要なものを思い浮かべる方が多いと思います。
しかし今は、スマホと会話型のAI(生成AI)があれば、小さな農園でも今日から使えることが増えています。この記事では、設備を買わずに始められる3つの使い方と、使うときの注意点をまとめます。
この記事のポイント
- 使い方①:作業の教え方やマニュアルの下書き、外国語への翻訳
- 使い方②:写真で病害虫の見当をつける
- 使い方③:記録・事務・販売の文章づくり
- AIの答えは間違うことがある。農薬と安全に関わることは、必ず人が確かめる
目次
農業とAIの今
農業で使われるAIには、大きく2つの種類があります。
| 種類 | 例 | 始めるには |
|---|---|---|
| 機械やセンサーに組み込まれたAI(スマート農機など) | 自動操縦のトラクター、ドローン、環境制御 | 機械や設備の導入が必要 |
| スマホやパソコンで使うAI(生成AI、画像診断アプリなど) | 文章の下書き、翻訳、写真からの病害虫の見当 | スマホがあれば、無料または月数千円で始められる |
国も農業での新しい技術の活用を後押ししています。2024年10月1日には「スマート農業技術活用促進法」が施行され、計画の認定を受けた農業者は、税制や融資の特例を受けられるようになりました(農林水産省)。
一方で、生成AIを使ったことがある人は、日本ではまだ少数派です。総務省の調査では、日本は26.7%で、米国(68.8%)や中国(81.2%)を大きく下回っています(総務省「令和7年版 情報通信白書」、2024年度調査)。裏を返せば、今のうちに使い方を覚えておくと、周りより一歩先に進めます。
この記事では、設備いらずで始められる「スマホやパソコンで使うAI」の使い方を紹介します。
使い方① 作業の教え方を下書きし、翻訳する
新人や外国人スタッフに作業を教えるとき、いちばん大変なのは、説明を文章にまとめることです。生成AIはこの「下書き」が得意です。
やり方
- 作業の流れを、いつも新人に話すようにスマホに向かって話す(音声入力で文字にする)
- その文章をAIに渡して、手順にまとめてもらう
- できた下書きを、作業を知っている人が確かめて直す
- 必要なら、スタッフの母国語に翻訳してもらう
AIへの頼み方の例
次の話を、初めて作業するアルバイト向けの手順書にまとめてください。
手順は番号を付けて短い文で。安全に関わる注意は「注意」として分けてください。
内容にないことは足さないでください。
(ここに話した内容を貼り付ける)
最後の「内容にないことは足さないで」が大切です。AIはもっともらしい一般論をつけ加えることがあるため、その農園のやり方と食い違わないようにします。
翻訳も便利ですが、危険に関わる説明は、可能ならその言葉を話す人にも確かめてもらうと安心です。作業のコツを聞き出す方法は、「熟練者のコツを言葉にする方法」で詳しく紹介しています。
使い方② 写真で病害虫の見当をつける
葉や実にいつもと違う症状を見つけたとき、スマホで写真を撮ると、AIが病気や害虫の候補を示してくれるサービスがあります。
| サービス | 提供元 | 内容 |
|---|---|---|
| レイミーのAI病害虫雑草診断 | 日本農薬など | 無料のスマホアプリ。写真から病害・害虫・雑草を判別し、生態や防除の方法、有効な農薬を表示する |
| 農研機構AI病虫害画像診断 | 農研機構 | トマト、キュウリ、イチゴ、モモ、ブドウなど12作物が対象。農家が直接使うものではなく、民間のアプリなどに組み込んで使われる |
大切なのは、AIの結果を「答え」ではなく「見当」として使うことです。農研機構の発表でも、最初に開発した4作物では、学習用とは別の場所で撮った写真での正解率が72.6~89.2%で、実際の現場では精度が下がると見込まれています。
候補が分かったら、図鑑や反対側の葉も見て確かめ、迷ったときは普及指導センターやJAの営農指導員に相談してください。
使い方③ 記録・事務・販売の文章づくり
畑仕事の後の「書く仕事」も、AIが手伝えます。
| やりたいこと | AIへの頼み方の例 |
|---|---|
| 作業日誌を整える | 「今日の作業を話すので、日付・場所・作業・気づいたことの表にして」 |
| 直売所や通販の商品説明 | 「このりんごの品種と育て方のこだわりを、100字の説明文にして」 |
| SNSの投稿 | 「収穫が始まったことを伝えるインスタグラムの文を、やさしい言葉で3案」 |
| 取引先への連絡 | 「出荷が2日遅れることを伝える、丁寧なメールを下書きして」 |
| 補助金の申請書 | 「この募集要項にそって、我が家の計画を整理するための構成案を作って」 |
数字や日付、品種名などは、AIが勝手に変えたり足したりすることがあります。できた文章は、出す前に必ず自分で読み直してください。
使うときの注意点
- 農薬は必ずラベルで確かめる:使える作物、希釈倍数、使用時期、回数は、AIの答えではなく、農薬のラベルや防除暦で確かめます
- 安全に関わることはAIだけで決めない:農機の扱いや高所の作業など、危険を伴うことは、責任者が確かめてから伝えます
- もっともらしい間違いに気をつける:生成AIは、事実と違うことを自信があるように書くことがあります。数字や制度の話は、公式の資料で確かめます
- 入れる情報に気をつける:スタッフの個人情報や、取引先との契約内容などは、入力する前に各サービスの利用規約や設定を確かめます
- 最後は人が確かめる:AIは下書きや見当をつける道具です。外に出すもの、人に伝えるものは、必ず自分の目で確かめます
始め方の3ステップ
- 無料で試す:多くの生成AIには無料で使える範囲があります。まずはスマホにアプリを入れて、話しかけてみます
- 毎日の小さな仕事を1つ任せる:作業日誌の整理や、新人への説明の下書きなど、間違っても自分で直せる仕事から始めます
- うまくいった頼み方を残す:よい結果が出た頼み方はメモしておき、家族やスタッフと共有します
新人教育に使いたい場合は、農園向けに作られたサービスもあります。「畑のマニュアル工房」は、話すだけでAIが手順の下書きを作り、5つの言語で読めるマニュアルにできます。AIの答えは登録したマニュアルだけをもとにし、安全に関わる質問は責任者への確認を案内する作りです。今ならモニター農園(30日間無料・カード登録不要)を募集しています(詳しくはこちら)。
まとめ
小さな農園でも、スマホがあればAIは今日から使えます。
- 教える:作業の説明を下書きし、外国語にも直せる
- 見当をつける:写真から病害虫の候補を知る
- 書く:日誌、商品説明、連絡文などの手間を減らす
どれも「AIが下書きして、人が確かめる」が基本です。まずは1つ、試してみてください。
よくある質問
Q. パソコンがなくても使えますか?
使えます。この記事で紹介した使い方は、どれもスマホだけでできます。音声入力を使えば、文字を打つのが苦手な方でも始めやすいです。
Q. お金はかかりますか?
多くの生成AIや病害虫診断アプリには、無料で使える範囲があります。たくさん使う場合や、高い機能を使う場合は有料になることがあります。料金は各サービスの最新の案内で確かめてください。
Q. AIの答えをそのまま信じていいですか?
そのまま信じるのは避けてください。特に農薬、安全、制度、数字に関わることは、ラベルや公式の資料、普及指導員などで確かめるようにしましょう。
参考資料
- 農林水産省「スマート農業技術活用促進法の施行について」(2024年10月1日)
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」個人におけるAI利用の現状
- 農研機構「農研機構AI病虫害画像診断WAGRI-APIを公開」(2022年3月)
- 日本農薬「レイミーのAI病害虫雑草診断」
この記事は2026年10月21日時点の情報をもとにしています。各サービスの内容や料金は変わることがあるため、利用前に公式の案内をご確認ください。